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イベントレポート

つなぐ、つたえる、家族の記憶 ~ファミリー・ヒストリー~

学び

【目的】

オーラルヒストリーは、ある出来事が「歴史的事実」というよりも、その人のなかで「どのような記憶」として残り、感じ取ったのかということに着目して記録・継承する学問的手法である。この手法により、他者理解やコミュニケーション力が上がり、人の気持ちになって対話的に深い学びをすることが可能になるという。
この講座では、家族の歴史を聞き取り、多様な視点から物事を見られるようになることを目的とする。

【取り組み内容】

当初、この講座は戦後75周年を機に、家族への戦争体験の聞き取りを目的として8月開催予定で企画されましたが、コロナウィルス感染拡大の影響で、11月に延期開催されました。それに伴って、聞き取りテーマを戦争に限らない、「家族の歴史」へと広げたものです。
講師は元TBSアナウンサーの久保田智子氏にお願いしました。久保田氏は2017年にTBSを退職後、アメリカのコロンビア大学でオーラルヒストリーを研究、修士となりました。現在も広島の原爆被害など戦争の記憶を伝える活動をするため、東京大学大学院で研究を行っています。
講座は全2回で、1回目はオーラルヒストリーの手法についての説明と、参加者一人一人に「誰に、何を聴きたいか」を発表してもらいました。講師が雰囲気づくりに長けており、受講者の皆さんはそれぞれに自分の思いや質問を積極的に発言されていました。
次回の講座までの2週間に、各自で家族へのインタビューをお願いしました。
事前に先生へ録音したデータを送り、アドバイスを受けることもできました。
インタビューの記録方法はスマホなどのボイスレコーダー機能や録音機器を使います。
2回目の講座では、実際に家族へインタビューをされた方達から、感想を伺いました。お母様へ昔の写真を見ながら聞き取りをされた方は「終わったあと、母が喜んでくれたことが印象的でした」と語っておられました。ご主人に聞き取りをされた方は「山登りが好きで、人間嫌いな人だと思っていましたが、一緒に登山をした方たちへの感謝の気持ちがあったことを初めて聞いて驚きました」という新たな発見を。また、おばあ様に聞き取りをされた女子高生は「今まで自分は話す方が得意でしたが、相手の話を聞き出すことの難しさを知りました。今後の学生生活に生かしたいです」と語ってくれました。

【成果】

オーラルヒストリーは「わかったつもりにならない」「相手の気持ちに寄り添う」ということが大切とのこと。受講者の皆さんは、まさに最も身近な存在である家族に対して
「この人は、こういう人」という思い込みを超えた「新たな発見」「多様な視点」を得られたとのことで、講座の目的は達成できました。
また、講座終了後のアンケートでは「家族に話を聞く機会ができて良かったです」「残された親戚・縁者から広く深く話を聞き出して、私なりのファミリーヒストリーを探りたい」といった、今後も歴史や記憶の継承をしてみたいとの回答も得られました。
この講座の内容は12月8日放送のFMやまと「やまもり☆ほっとスクランブル」でも講師のお話や受講者の感想など、音声録音と共にご報告させていただきました。
今このコロナ禍で、家族と共に過ごす時間が増えた方も多いと思います。ぜひ「オーラルヒストリー」の手法で家族や身近な人と“対話”を心がけてみてください。そこにはかけがえのない豊かな時間と、大切な人の知らなかった一面という発見が待っているはずです。

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